山奥の竜宮城
金剛宮から、淡水駅方面に戻るバスに乗り、途中の「三芝」というバス停で下車。

次の目的地である「三芝貝殻廟」は結構山奥にあるため、ここからタクシーを使用。
初めてのタクシー使用だったので不安だったが、筆談で運転手に目的地と金額を交渉したところ、あっさりと通じた。台湾では漢字を書けば割とどうにかなる。ただ、音にして伝えることができない。
フランス語などは綴りによる発音のルールがあるので、意味がわからなくても単語を音に出せたりしたが、その逆は初の体験なので、台湾では今まで使ったことの無い脳の部位を刺激されているような感覚を味わった。
出発すると割とすぐに山道になる。「こりゃとてもじゃないけど歩いて行くのは無理だなあ」とか、「いまここで強制下車させられたら死ぬ」とか、そんなことしか思い浮かばない鬱蒼とした木々の間を走ること約20分、目的地に到着・・・、
したのだが、

トタニズム様式の建築物が待ち構えていた。うーむ。
少々不安を抱えつつ、足を踏み入れると・・・、

!?

おお!

すげー!!

豪華!
なんだこれは。あの打ち棄てられた納屋みたいな入口は、ギャップを感じさせるための演出だったのか。
「貝でできた廟」ということで、蒲郡のファンタジー館のようなものを想像していたが、実際に目にすると、受ける印象はかなり異なる。蒲郡も貝だらけだが、どちらかといえばあちらは「静」に寄った雰囲気があった。それに比べると、こちらはずっと規模は小さいが、その分ぎゅっと凝縮された勢いのようなものがある。もっとアッパーな感じの何かである。「とにかく一点突破」みたいな。「ここに全部詰め込んでます」みたいな。
実際、廟から振り向けばトタニズムは健在。狭い一部に全力を上げているのである。

見とれながらも参拝方法がわからず、どうしたものかと立ち尽くしていると、係のおっさんに、「ニホンジン?」と呼び掛けられる。そうだ、と答えるやいなや、

「線香に火をつけて、そこに刺すのだ」

「次はこれを撫でろ、金持ちになるぞ」
はたまた、「この瓶をかいでみろ、酒の匂いがするだろ、頭が良くなるぞ」
などと、激しいガイダンスの嵐に飲み込まれた。
しかしこう改めて振り返ってみると、何故相手の言っていることが理解できたのか、よく思い出せない。片言の日本語で言っていたのか、ジェスチャーで自分が勝手にそう思ったのか、それともどこかに書いてあったのか。
混濁する記憶の中で浮かび上がってくるのは、語られた内容や意味より、「強烈なおせっかいさ」である。
これは決して悪い意味では無いのだが、「親切」というより「おせっかい」という表現がしっくりハマる人が多い、というのが、このあとの滞在も含めて感じた台湾の印象だ。「親切」でもあるのだけれど、それとはまたちょっと違う何かを彼らは持っている気がする。もちろん、皆がそうではないし、また、自分が思う「親切」とか「おせっかい」は、所詮日本の基準でしか無いけれど。
廟の中も豪華。


この祭壇の脇に小さなトンネルがあり、「入れ入れ」と促される。
言われなくても、ナチュラル・ボーン・閉所愛好家としては、そこに穴が開いていれば入るだけである。

ほほう・・・

狭い(喜)

腸の中を進む食物の気持ち

サンゴ、サンガー、サンゲスト

中にも神様がいる

もう一生分の珊瑚を見たかもしれない。
こんな感じで、一通り見学したあとは、タクシー運転手と約束した30分が経つまで、写真を撮る。







30分でも一通り見学はできるけど、細部をじっくり見ようとすれば、いくらでも時間を過ごせてしまえそうな場所。
そんな山奥の竜宮城であった。
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