『四家の怪談』

フェスティバル/トーキョーの『四家の怪談』に行ってきた。
 
『四谷怪談』を翻案した短編小説(台本?)の舞台を観客が見学する作品。
 

 

 

 

 

 

 

「日常」と「欲」の両方に正直な風景は、ある狙いを元に造られ整えられたものではなく、時間とともにあちこち好き放題生い茂る草木のように、人の心の自然を感じさせるものだった。きっと気がついたらこうなっていたのだろう。」

 

 

 

 

 

「飲み屋には二つの種類がある。声を大きくさせる店と、声を丁度にさせる店。伊右衛門、岩の働く居酒屋チェーン店は前者の方で、味よりも自己主張を目的とする人たちに愛され、繁盛していた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊右衛門がそう言ったのは冬のはじまりの河川敷だった。川と高速道路が上下に並走する、何かをたち切り、いくつもの橋と橋桁によりしかし共存を強制された事情ある風景。うるさく静かで平和なそこに、岩の心は親近感を抱いていた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京成関屋駅は不思議な場所だ。改札を抜けるとすぐ目の前に東武スカイツリーライン牛田駅の改札がある。だからもちろん、牛田駅は不思議な場所だ、と同じことがいえる。同じ場所なのに名前が二つある。それとも同じだからこそ違う名前があるのか。どのみち事情があるにちがいない。」

 

 

 

 

 

 

「岩はふいにレバニラ定食とカレー大盛り、タンメンを二つずつ、餃子二人前、シュウマイ二人前、それに紹興酒ボトルを注文し、それらが出揃うまで無言を通した。」

 

 

 

五反野駅前から交差点へ向かう道にはいくらかの店が並んでいて、古くからそこにある店と、スーパー、チェーン店、ひやかし程度におしゃれな店、それらが意図なく混じり合っている。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「交番、ガソリンスタンド、たばこ屋、コンビニに囲まれ、近くには郵便局、銭湯もあるそこは、それなりの人通りはあるが、やはり誰ひとりその一点にとどまり続ける理由もないようで、ほんの一時交わり何かを手に入れ、また先なり横なり後ろなりへ向かう。 その点のそばに岩は部屋を借りた。」

 

 

 

 

「四家の交差点は六叉路になっている。東武伊勢崎線五反野駅から北へ向かう道と斜め左右にはしるもう二本の道とが、そこで一つに交じりあい、またバラバラに分かれていく。」

 

 

※以上の引用はすべて『創作民話 四家の怪談』(つくりかたファンクバンド)冊子より