「ここで漱石が血を吐いたのかー」などと思いつつ、駅前からバスに乗る。
30分ほど乗り、宝蔵院前で下車。
伊豆極楽苑に到着。
・・・なのだけれど、内部は撮影禁止なため、残念ながら写真はなし。
しかたないので言葉で簡単に説明すると、この伊豆極楽苑は、仏教書『往生要集』(985年)に基づいて、死後の世界を教えてくれる施設。
上の写真にあるような、屋外の鬼の像や看板は笑顔をかわいく振りまいていたりするが、だまされてはいけない。館内では鬼が地獄に堕ちた人々をズッタズタに容赦なく引き裂いたり潰したりしている場面を描いたジオラマを見学するのである(「極楽苑」という名前だが、中身は「地獄苑」なのである)。
一言で言うなら、「イッツ・ア・スモールワールド 〜地獄版〜」みたいな感じだろうか。
ただし、「イッツ〜」みたいな船はない。歩きである。あと、音楽の代わりに、「五」と「七」の和のリズムで押してくる説明文が読める。
でも、「恐ろしさ一本槍」というわけでは全然ない。人形の造形を初めとして、全体的にユーモラスな雰囲気が漂っていて、「地獄こえー」と思いつつも、笑い成分は多い。
要するに珍スポットである。
だが、仏教の地獄や死後の世界に関する教えについて、ちゃんと見学すれば詳しく知ることができるようになっている(というか、それが本来の施設の目的である)。たとえば死後の四十九日の間にどのように生前の行いについての裁判を受けるか、とか、罪の重さに応じて、八種類のどの地獄に堕ちるか、とか。
最近色々巡ってて思うが、ここに限らず、珍スポットは実は勉強になる場所が案外多い。
ちなみに、二階には性の秘宝館的な展示がある。そっちをもって「極楽」を名乗っているのかはわからなかった。
行きやすい場所とは言えないけれど、いつかまた訪れたい。
極楽苑を満喫したあとは、どうしようか迷ったものの、三島まで戻り、駅から無料シャトルバスに乗り、ヴァンジ彫刻庭園美術館へ。
「クレマチスの丘」なるシャレオツ(?)なエリアにある。
緑がきれいな良い庭園。
ヴァンジというのは、この庭園に展示されている彫刻の作者(イタリア人)のお名前らしい。
そんなことも知らずに来たが、変に小難しくない、かわいい感じの作品が多くて好印象だった。
天気もよかったし。
「チューブの中の女」。そのまんまである。
キメ顔でこちらを見ていた。
有閑なマダムたちと、いかにも「連れられて来ています」的なおっちゃんたちが、ツアーで来ていた。
珍スポットばかり巡る旅だったせいか、こういうちょっとアレなヤツはすぐ目についてしまう。
同じエリア内に、IZU PHOTO MUSEUM、ベルナール・ビュフェ美術館、井上靖文学館などもあったのだが、時間が足りなくて行けなかったことが悔やまれる。
ただ、思っていたより熱海や三島は家から近い(東海道線に乗ってちょっと眠っていれば着く)ということが今回判明したので、その気になれば割と気軽に来られそう。
そんな感じで、9月の伊豆旅行が終わった。