自転車で深夜の山手線一周

慎重に検討を重ねた結果、誠に残念ではございますが、終電後の山手線29駅を自転車で回ることとなりました。今後の活躍を心よりお祈りいたします。

ここはまだ安全な場所


というわけで、まず深夜1時半の鶯谷に着く。山手線の全駅中、車窓から外を覗くだけで新宿よりも渋谷よりも池袋よりもナニをどうするための場所なのか一目瞭然のあの街である。虹の橋を渡って行く大人の世界である。 

山手線の中では家から近いのだが、実は鶯谷駅を自分は利用したことが無い。そのため、どこに改札があるのか正確に知らず、適当に道を入ったら、ああ、ネオンが綺麗で死にたい。

かつてはウグイスが鳴いていたのかもしれないが、今この街で鳴いたり鳴かせたりしているのは人間である。林立する大人の巣箱。地面だけを見つめ周囲を遮断しながら、その隙間を縫うように進む。

だがそこでふと自分の姿を振り返り、カメラをぶら下げていることに気づく。 嗚呼、実に不審者ではないか。 このような場所で、何を撮ろうというのか。その答えは「駅」であるのだが、捕らえられて詰問された場合、相手を説得できる自信が全く無い。

早くこのお伽の国というか夜伽の国から出ないといけない。

と思っていたら案の定というべきなのか、道を歩いていたお伽の国のキャストの男性に「何かお探しですか?」と声をかけられる。哲学的な問いである。青い鳥はウグイスなのだろうか。 

「大丈夫です」と風のように走り抜ける。ちなみに何が「大丈夫」なのかは今でも分からない。 

悲しい。無駄に悲しい。脳内で何故か玉音放送が再生される。何に負けたのだろうか。


と、あっけなく駅を発見。


ずいぶん小さいが、これがメインの改札なのだろうか。 

実をいうと、少し離れたところにある坂道の途中に改札があるのは知っていた。だが、最初の駅であるし、出来ればなるべくメインの改札を撮っておきたいと思ってここまで足を踏み入れたのだ。しかし結局、その坂側のほうが大きそうだ。これなら初めからそっちの改札を素直に撮っておけば。あの涙はなんだったのだ。

だがもうそんなことはどうでも良い。

とにかくいつまでも夢の世界にいてはいけない。それがお伽話の決まりである。というかそのお伽話にそもそも参加できてない。

駅前、でいいのだろうか


さあ、もうこの七色の黄泉比良坂から出て、上野へ・・・、と思ったら、背後から声をかけられる。ニコニコした、白髪交じりの中年男性。優しそうだ。お伽の森の木こりかもしれない。

 「風俗行く?」

行かないよ! 首を振る。しかしまだ笑ってる。木こりなりのジョークなのかもしれない。

 「外人いるよ?」 

コミュニケーションが取れない。お互いに言いたいことを言うだけだ。かつてこんな演劇作品を読んだ気がする。やはりどこか現実感が欠けている。 

「行くところあるんで! んじゃ!」

ぐるっと回ってくるわけだから、「行くところ」は最終的にここになるんだけど。

これも鶯谷
 
初めからこっちの改札を撮っておけば良かったのです。

 


まあとにかく。


上野公園口前。やっと現実に帰ってきた気がする。


取り壊されることなく、世界遺産になるまで頑張って頂きたい。


正面っぽいところ。


次は御徒町へ。

 
 


アメ横を抜けて。


誰もいない。いたら怖いのでいなくていいけど。


そのまま線路を辿り、心の里・秋葉原へ向かう。結構良く使っている道だが、こんな時間に通ることはなかなかない。


台車。


以前来たことのあるカレー屋。しまっているのにカレーの匂いがした。ナマステ。 


我が第二の故郷、ヨドバシカメラ。垂れ幕は夜中にクレーンで替えているようだ。 

 

 


タバコ公園も無人

秋葉原っぽい風景もちょっと撮っておこうと、ぐるっと回る。

 

 

 
 
 


次は神田へ。 万世橋を渡る。

 

 


この辺の高架下は世界遺産にすべき。 

 

 

 


神田駅。夜の駅はどこもだいたいシャッターを閉めるのですね。

 
 

 この奥に勇気を出して乗り込んだが、まあ予想通りというかなんというか。寝てた。

しかし、こういう景色を見て、「寂しい」と思うのか 「楽しい」と思うのか



「怖い」と思うのか 「綺麗」と思うのか

そのどれかひとつが正しいというわけではない、と信じられるように生きていきたいと思い、


 人に対しては、どう感じても良いから、どう感じていても放っておいて、と思うが

なかなかそれが通じないということを愚痴るほどには、他人に対して自分がそれをうまく出来ているわけでもなくて

というようなポエムをいい歳して詠っていると、


ここに自分もやがて宿を求めることになるのだろう。

闇に潜んでいるノマドの先輩を轢きそうになった。危ない。


しかし、ちょっと道をずれたら丸の内。格差はわずか道1本である。

まるで人生のようだ。

僕も丸の内のオフィスでエリートとして働いて、かわいい奥さんとかわいい子供とローンで買ったマンションで幸せに暮らしたかった

と、書いてみたかっただけで、本当にそう思っているのかは自分でも良く分からない。

いや、本当は分かっているのだけど抑圧しているので分かってはいけない。


分かろうと分からなかろうと東京駅である。

基本的に夜は工事の時間らしい。どこでも。

 


国際フォーラム。節電しろ。


有楽町。楽しみが有る町。

それにしても、東京に住んでもう6年くらいたち、特にここ最近はチャリであちこち回っていたからか、意外とどこにいっても、何かをした記憶があったり、なかったり。 割と初めて来る場所は少ない。

 


銀座方向もチラ見。

 


次を目指す。


スリムな猫。


良い感じでアナーキーな高架下。世界遺産にすべき。 


さらに小道が中にあったり。どういう構造なんだ。


と思ったら人生みたいな、悪夢みたいな、道があったり。

 

 
 
 


新橋。

サラリーをもらっているマンのための街を、サラリーをもらっていないマンが夜な夜な撮る。

 
SL広場。

 

 


また線路に沿って進む。


シャレオツな舗装がされていてクソ走りにくい。


夜は配送とタクシーとコンビニとノマドと風俗の客引きの世界。


浜松町。 


わーい朝鮮戦争で破壊された米軍戦車の良質な鉄で作った東京タワー あかり朝鮮戦争で破壊された米軍戦車の良質な鉄で作った東京タワー大好き


良い感じのビルヂング。こういうところで探偵事務所を開きたい。二階に。


低い。このへんは線路が低い。故に線路をくぐる道も低い。 

 


時々こういう50年くらい時間が止まったような住宅を見かけることがある。住んでみたいような、すぐ嫌になりそうな。


歴史的に重要な地


今はキティちゃんの痛車がおかれている。

 
田町。 殆ど来たことがないが、諸事情によりこの地にはトラウマがある。
 
 
 
登ってみる。 
 
 
寒々しい。心象風景の具現化でございましょうか。
 


降りた。

 
次は品川。 
 
 
 
この道は走りやすい。自転車用レーン? がある。
 
 
 
向こうに行けば赤穂浪士の墓がある泉岳寺。通過。 
 
 
 
品川駅は中身の割に外観がいまいちな気がする。なんというか、別に誰の同意も求めないが、俺が訪れたときの富山駅に似ている。 
 
上まで行ってみる。
 
 


疫病が発生していた。写ってないがあと3人ほど死んでいた。

深夜に駅の通路で寝ている中年を見て色々と思うところはあるが、深夜に自転車で徘徊している不審者にどう思われたくもないだろう。醜態をさらしても向こうの方が偉いのである。

だって働いているから。 

みんなが働いているから山手線のように世界はちゃんと回るのだ


世界の大崎止まりもあるのかしら

というわけでその大崎に行きたいのだが、このあたりは線路沿いに行こうとするとややこしそうなのは調査済み。

携帯電話の自転車ナビを起動。線路に沿わずに行く。

 


御殿山。 


自転車に乗って東京を走るようになって分かったのだが、地名は結構地形をちゃんと表している。無駄に「山」とか「坂」とか「谷」とかついていない。電車に乗っていると気づきにくいけど。

 


で、大崎。だが、このあたりには縁が全然無いので、どこが「大崎駅」的なところなのか分からない。


何も思い入れの無い土地なので、とりあえず着いたことだけ記録。

ここでカメラのバッテリーの調子がおかしくなる。入れ直したことで復活したようだったが、不安なので撮影を減らすことに。せっかくここまで来て、カメラが終わったらちょっと悲しい。 

 
というわけでいきなり五反田君である。ここも一度しか来たことがない。ハンバーグを食べに来たことしかない。 
 
 
 
 
 
そして途中の道を写すことも無く、いきなり次の目黒。さんまと寄生虫の街である。住所は品川区上大崎。なのに目黒。わざとやったとしか思えない。 

 

 


次は恵比寿、と走っていたら、ガーデンプレイスのところに出た。カップルと俗に呼ばれるところのアベックがいる。

そういえばさっき目黒にもいて、 「お互い好き同士なんだからぁ〜〜」とか言ってたんだった。言っていたんだった。言っていらしていたんでしたのでしたったらった。

僕もガッキーと夜の散歩がしたい。

それが叶わないならピンポイントで狙ったところに雷を落とす術を使えるようになりたいです。今すぐに。

恵比寿様。

 
 


始発が動き出しそうな時間になっている。  当初の計画としては「終電後の全駅を撮影」だったのだが、どうも無謀だったらしい。まだ半分くらいしか来てない。

まあいいや。 

というわけで渋谷へ。

 
このあたりに来ると、良く言えばグラフィティ、悪く言わなくても犯罪、が目立ってくる。
 


豆腐屋さんに謝れ。

 
 


渋谷。

 
暗いのにヒカリエとはこれいかに。 
 
 
 
 


さすがに若者が多い。


「もう」働いていた。「まだ」働いている。どちらかよく分からない。とりあえず、この写真展は観に行きたい。

 
明治通りへ。この通りは何故か好き。
 
 


 ラフォーレ前。もう夜が明けそう。

 
 原宿駅。 
 
 
 
5時前なのに服をたたんでいる人が中にいた。「もう」働いてるのか。「まだ」働いているのか。
 
 

 


次は代々木。

 
ドコモのタワーを目指せば良いのである。分かりやすい。
 


と思ったら行き止まり。まるで人生のようだ。


向こうに行ったら千駄ヶ谷。将棋の街。

 


そして代々木。駅は動いてるけどまだ人は見当たらない。


新宿へ。

 

 
 
新宿の朝は何度も見ているので、珍しいという気がしない。 
 


汚い。毎日誰かが掃除しているのだ。


線路沿い。 カラフルに塗ってあることが逆に寂しさを醸し出している気がしないでもない。落書き防止なんだろうけど。


新大久保。もう結構人が。

 


新大久保と言えばロッテ。 チョコレート食べたい。


ああ、ついに電車が動き出してしまった。

 


手塚先生。 高田馬場

そういえば以前ここに住んでいた友人は記者になり、国会議員と市長と大学教授と芸能人から訴えられていたが元気だろうか。

 
道に迷う。
 
 
 
 
線路発見。 
 
 

 


 目白。ここに登るまでの坂で俺は白目。


次はあのモノリスを目指していけばおk。


住宅街を抜けて


池袋名物・なんだかよく分からない像


未だにここに来ると窪塚が脳裏に浮かぶ。


立ち入り禁止の表示。俺にだけ見えているのかもしれない。


この地下道、「ウイ・ロード」とか呼ばせているが、


本当は雑司ヶ谷隧道(ずいどう)と言うらしい。こっちのほうが良いと思うが。 書けないけど。

 


池袋というと個人的にはこっち側のイメージ。 東口。

 
 


ピンドラにも出てたアレが見える。しかしこう改めてみると、池袋の駅ビルは横に長い。

また線路がどこだかわからなくなり、しばし迷う。


 このあたりのビルもよく見ると渋い。世界遺産かもしれない。


本日3本目のペットボトル。

 


おお。 あった。


ここから東向きになるのか、眩しい。


池袋からもスカイツリーは見える。


また住宅街。

 


銭湯。


ミニ四駆を走らせたい。


このあたりは坂道がアナーキー


さっきまで見下ろしていたはずの電車を見上げている。


大塚さん。

 


阿波踊りをやるらしい。

それにしてもすっかり明るくなってしまった。

 
薄い。
 


巣鴨

 
なんというか、

 

 
このあたりの駅は地味である。

 


駒込

そう、このあたりの駅は地味である。特筆すべきことがない。

ただ地味だとしても、もしこのあたりに生まれ育っていたら、どんな人生だったのだろう、とは思ったり。


それが良い結果となっていたか、悪い結果となっていたかはともかく。

生まれながらに、自分が欲しいモノを持ってる人は、たくさんいて


それはやっぱり、改めて考えると、羨ましい、気がするけど、

そういう気持ちも山手線のごとく、回っているのだろうか。

それともまっすぐで、上り下りがあるのかしらん。


そんなポエム。


またアナーキーな坂。 


見下ろしていたものをいつの間にか見上げている。まるで人生のようだ。

 


そしてまた坂を上って、


坂を下りて、田端。


坂ばっかり。

 


西日暮里。声に出して読みたい日本語。

 

 

 


本日初の踏切ストップ。


さあ、いよいよ日暮里でゴール・・・ と思ったけど、「JR日暮里」的な表示が見当たらん。


仕方が無いので、心当たりのあるところまで階段を上り 


ゴール。 全駅制覇。


心の中ではこんなポーズ。一応達成感はある。

しかし、GPSロガ—のために、輪を描かなくてはならない。 というか、一周と言うからにはあそこにまた行かなくてはならない・・・。


というわけで鶯谷へ。行きたくないけど。行きたくないけど。 

 


まあ、日が昇ればおとなしい街である。

というわけで、山手線一周、無事終了。



最初の鶯谷の撮影時間が 2012:08:28 01:33:07
最後の鶯谷の撮影時間が 2012:08:28 07:00:50

自宅までの行き帰りを含めた走行距離