この日は大久野島に行ってみた。前日に行った愛媛県の大三島の北隣なのだが、こちらは広島県となる。
ここが大久野島の中心部、休暇村。レストランや土産物店などがある。宿泊もできる。この島で人がいるところはここだけ。小さな島なのである。
ところで、芝生の上などにぽつぽつ見えているものだが・・・、
野良うさぎである。
そう、この島はうさぎの楽園なのだ。なので、島には自動車で来ることはできないし、島内にも自動車は殆どない。港から休暇村までのバスがあるが、それも超低速運転である。
しかしそうやって甘やかしているため、一部のうさぎどもは堕落してしまっているようだ。
その表れの一つがこの左下の白うさぎの寝相だろう。
俺と同じ寝方である。つまり堕落しているということだ。
さて、そんな大久野島だが、ただのうさぎ島では終わらない。
1929年から終戦まで、ひそかに毒ガス兵器を製造していたという、暗い歴史もある場所なのだ。
島の資料館では、毒ガス工場開設の経緯や、当時の工場の労働環境などについて知ることができる。
しかし、この島の毒ガス生産の痕跡は資料館だけで終わるものではない。島内には今でも、毒ガス生産等に使われた施設の遺跡が残っているのだ。
このように、各施設跡の前には、環境省が作成したパネルが設置されている。
昔は入り放題だったのだろうか、戦争を知らずに育った愚か者どもの落書きも残っている。今は柵がしてあって入れない。尤も凄く適当な柵なので、今でも愚か者は余裕で入ってしまうだろうが・・・。
うさぎは入り放題である。
自分としては初めての電動自転車だったのだが、坂道もあるので、凄く楽だった。
これは毒ガス貯蔵庫の跡。内部の壁が黒焦げなのは、米軍が浄化のために火炎放射器で焼いたからだとか。
これは砲台の跡・・・、だったか(忘れた)
自転車ではいけない高台のエリアには、このような道を徒歩で登っていくのだが、
かなり急で長い坂道。基本的に運動をしない身には辛い。
ヒーヒー言いながらようやく登り切ると、こんな場所に出た。
下の方では柵があって立ち入り禁止になっている場所ばかりなのだが、何故かこの辺りは入り放題なので、潜入してみたが・・・、
真っ暗である。こういうときはiPhoneのライトが便利。でも怖い。
曲がらないと中を見ることができないのがさらに怖い。カメラのISOはアゲアゲだが、腰はヒケヒケである。
手振れ補正では補正しきれない手の震えが見事に反映されてしまった一枚。
ちなみに中には特に何もなかった、というか、見たくないものが見えてしまうのも嫌なので、ささっと確認して退散した。チキンである。
表に出て再び歩を進めると、また何か別の遺跡がある 。こちらも入り放題。
暗くないのであまり怖くはないが、こちらも特に何もない。
砲台の跡だったらしい。どうやら裏側(?)から来てしまったようだ。しかし先の部屋などがなんだったのか、具体的にはよくわからず。弾薬庫か? 詰所か?
こんなに高いところにもうさぎがいる。良く登ってきたもんだ。努力家である。
こいつらなら亀にも負けないだろう。寓話の教訓を崩壊させる、ある意味イヤなうさぎである。
来た道を再び下り、自転車で探検再開。
火薬庫の跡。「MAG1」というのは、戦後に米軍が使用した際に書かれたものだそう。
屋根はあえて簡素なものにしていたらしく、今ではすっかり無くなっている。
さらに自転車を漕ぎ進め、この島最大の遺跡に辿り着く。
発電所跡。でかい。
中にも入りたいが、ここは残念ながら立ち入り禁止。
ここにもうさぎがたくさん。
ところで、島に来る船の中にあった注意書きには、「うさぎは弱い生き物なので、優しくしましょう」「絶対に追いかけたり、だっこしたりしてはいけません」などとあった。たしかにそれはそうだろう。
だが、追いかけなくても、こいつらは人を追いかけてくるのだ。奈良のシカなどと同じで、人間=食い物、と思っているのである。もちろんシカと比べると小さいので、一羽一羽であれば迫力はない。しかし集団で群がってくると、このサイズでも結構激しいものがある。
当初はかわいいと思っていたが、島内を巡っているうちに、フィールド上にモンスターが見えるタイプのRPGでもやっているような気分になっていったのであった。
しかしここで、船に乗る前に港で「やじゅうのえさ」を100ゴールドで買っていたことを思い出した。この攻略アイテムを使えば、モンスターが仲間になってくれるかもしれない。
そんなゲーム脳な期待を込めて、とりあえずちょっとあげてみたのだが
うおっ!!
「弱い生き物」にしては、なかなかパワフルである。。。
皿があったのでまとめて入れてみた。写真ではかわいいと思うかもしれない。だが実際は、旧劇場版『エヴァンゲリオン』で弐号機が量産型に食べられているシーンのようであった。
そんなうさぎたちとの戯れのあとに、ようやく撮影。
やはり撮るのなら、島の二大名物を一枚に収めたくなる。
シュールレアリスムについて、「手術台の上のミシンとこうもり傘の出会い」なんて表現があるが、「瀬戸内海の島の上の、うさぎと毒ガス廃墟の出会い」も、なかなかシュールなのではないか、と思ったりした。
そんな大久野島。