うさぎと毒ガスの島

IMG_2365.jpg

 この日は大久野島に行ってみた。前日に行った愛媛県大三島の北隣なのだが、こちらは広島県となる。

 

IMG_2103.jpg

三原駅からバスで忠海港へ行き、そこから船に乗る。

 

IMG_2137.jpg

ここが大久野島の中心部、休暇村。レストランや土産物店などがある。宿泊もできる。この島で人がいるところはここだけ。小さな島なのである。

 

ところで、芝生の上などにぽつぽつ見えているものだが・・・、

 

IMG_2108.jpg

 野良うさぎである。

 

そう、この島はうさぎの楽園なのだ。なので、島には自動車で来ることはできないし、島内にも自動車は殆どない。港から休暇村までのバスがあるが、それも超低速運転である。

 

しかしそうやって甘やかしているため、一部のうさぎどもは堕落してしまっているようだ。

 

IMG_2145.jpg

 その表れの一つがこの左下の白うさぎの寝相だろう。

俺と同じ寝方である。つまり堕落しているということだ。

 

さて、そんな大久野島だが、ただのうさぎ島では終わらない。

1929年から終戦まで、ひそかに毒ガス兵器を製造していたという、暗い歴史もある場所なのだ。 

 

IMG_2114.jpg

 

IMG_2120.jpg

島の資料館では、毒ガス工場開設の経緯や、当時の工場の労働環境などについて知ることができる。

しかし、この島の毒ガス生産の痕跡は資料館だけで終わるものではない。島内には今でも、毒ガス生産等に使われた施設の遺跡が残っているのだ。

 

IMG_2146.jpg このように、各施設跡の前には、環境省が作成したパネルが設置されている。

 

IMG_2148.jpg

昔は入り放題だったのだろうか、戦争を知らずに育った愚か者どもの落書きも残っている。今は柵がしてあって入れない。尤も凄く適当な柵なので、今でも愚か者は余裕で入ってしまうだろうが・・・。

 

IMG_2149.jpg

 うさぎは入り放題である。

 

IMG_2172.jpg この日は休暇村でレンタサイクルを借りて島内を一周した。

 

自分としては初めての電動自転車だったのだが、坂道もあるので、凄く楽だった。

 

IMG_2184.jpg これは毒ガス貯蔵庫の跡。内部の壁が黒焦げなのは、米軍が浄化のために火炎放射器で焼いたからだとか。

 

IMG_2219.jpg

これは砲台の跡・・・、だったか(忘れた)

 

IMG_2217.jpg 今ではうさぎの遊び場である。

 

IMG_2221.jpg

自転車ではいけない高台のエリアには、このような道を徒歩で登っていくのだが、

 

IMG_2288.jpg

かなり急で長い坂道。基本的に運動をしない身には辛い。

 

IMG_2228.jpg

ヒーヒー言いながらようやく登り切ると、こんな場所に出た。

 

IMG_2227.jpg

下の方では柵があって立ち入り禁止になっている場所ばかりなのだが、何故かこの辺りは入り放題なので、潜入してみたが・・・、

 

IMG_2229.jpg

真っ暗である。こういうときはiPhoneのライトが便利。でも怖い。

 

IMG_2230.jpg

曲がらないと中を見ることができないのがさらに怖い。カメラのISOはアゲアゲだが、腰はヒケヒケである。

 

IMG_2231.jpg

手振れ補正では補正しきれない手の震えが見事に反映されてしまった一枚。

ちなみに中には特に何もなかった、というか、見たくないものが見えてしまうのも嫌なので、ささっと確認して退散した。チキンである。

 

IMG_2232.jpg

表に出て再び歩を進めると、また何か別の遺跡がある 。こちらも入り放題。

 

IMG_2268.jpg

暗くないのであまり怖くはないが、こちらも特に何もない。

 

IMG_2241.jpg 

 

IMG_2259.jpg

 

IMG_2281.jpg

砲台の跡だったらしい。どうやら裏側(?)から来てしまったようだ。しかし先の部屋などがなんだったのか、具体的にはよくわからず。弾薬庫か? 詰所か? 

 

IMG_2282.jpg

こんなに高いところにもうさぎがいる。良く登ってきたもんだ。努力家である。

 

こいつらなら亀にも負けないだろう。寓話の教訓を崩壊させる、ある意味イヤなうさぎである。

 

IMG_2286.jpg

来た道を再び下り、自転車で探検再開。

 

 

 

IMG_2313.jpg

火薬庫の跡。「MAG1」というのは、戦後に米軍が使用した際に書かれたものだそう。

 

IMG_2321.jpg

屋根はあえて簡素なものにしていたらしく、今ではすっかり無くなっている。

 

さらに自転車を漕ぎ進め、この島最大の遺跡に辿り着く。

IMG_2377.jpg

 

IMG_2381.jpg

発電所跡。でかい。

 

中にも入りたいが、ここは残念ながら立ち入り禁止。

 

IMG_2382.jpg 

 

IMG_2385.jpg

ここにもうさぎがたくさん。

 

ところで、島に来る船の中にあった注意書きには、「うさぎは弱い生き物なので、優しくしましょう」「絶対に追いかけたり、だっこしたりしてはいけません」などとあった。たしかにそれはそうだろう。

 

だが、追いかけなくても、こいつらは人を追いかけてくるのだ。奈良のシカなどと同じで、人間=食い物、と思っているのである。もちろんシカと比べると小さいので、一羽一羽であれば迫力はない。しかし集団で群がってくると、このサイズでも結構激しいものがある。

 

当初はかわいいと思っていたが、島内を巡っているうちに、フィールド上にモンスターが見えるタイプのRPGでもやっているような気分になっていったのであった。

 

IMG_2390.jpg で、そんなモンスターどもに取り囲まれている。ピンチである。

 

しかしここで、船に乗る前に港で「やじゅうのえさ」を100ゴールドで買っていたことを思い出した。この攻略アイテムを使えば、モンスターが仲間になってくれるかもしれない。

 

そんなゲーム脳な期待を込めて、とりあえずちょっとあげてみたのだが

 

 

 

IMG_2391.jpg 

うおっ!!

 

「弱い生き物」にしては、なかなかパワフルである。。。

 

IMG_2395.jpg

皿があったのでまとめて入れてみた。写真ではかわいいと思うかもしれない。だが実際は、旧劇場版『エヴァンゲリオン』で弐号機が量産型に食べられているシーンのようであった。

 

IMG_2411.jpg 

そんなうさぎたちとの戯れのあとに、ようやく撮影。

 

IMG_2398.jpg

やはり撮るのなら、島の二大名物を一枚に収めたくなる。

 

IMG_2344.jpg

 

IMG_2401.jpg

 

IMG_2430.jpg

 

シュールレアリスムについて、「手術台の上のミシンとこうもり傘の出会い」なんて表現があるが、「瀬戸内海の島の上の、うさぎと毒ガス廃墟の出会い」も、なかなかシュールなのではないか、と思ったりした。

 

IMG_2425.jpg

 そんな大久野島

 

 

封印された日本の離島

封印された日本の離島